建設機械レンタル会社で受付をしています。配達の手配も、返ってきた機械の確認も、問い合わせの電話も全部この席で受けています。
その中で、週に1回以上かかってくる電話があります。
「付属品が足りないんですけど」
機械そのものではなく、一緒に持っていったケーブルやプラグ、工具の話です。そして、この電話のかなりの割合が「実際には揃っている」で終わります。
この記事は、その電話のときに毎回説明している内容をまとめたものです。読んでおくと、足りなかったときに自分が損をせずに済みます。
結論:確認する義務は借りた側にあり、期限は「その日のうち」です
先に答えを出します。
- 受け取った機械と付属品が揃っているか確認する義務は、借りた側にあります
- 不足を申し出る期限は、多くの約款で「直ちに」または「当日中」です
- その日のうちに言わなかった場合、「正常な状態で引き渡された」とみなす条項が普通に入っています
つまり翌日以降に「足りなかった」と言っても、原則として通りません。厳しく聞こえるかもしれませんが、これは意地悪でそうなっているわけではありません。理由も含めて順番に説明します。
【第1部】約款には何と書いてあるのか
レンタル契約には必ず「約款」が付いています。申込書の裏や、会社のサイトに載っている細かい字のあれです。ほとんど読まれませんが、トラブルになったときに効くのはここだけです。
大手2社の約款を見てみます。どちらも公式サイトで公開されているものです。
どちらも「受領後直ちに確認する」と書いてある
| 会社 | 条文の内容 | 期限 |
|---|---|---|
| アクティオ | 第9条(物件の検収)物件受領後直ちに、納品書または納品伝票などの内容に基づき、規格・仕様・機能および数量等が契約に適合することを確認する | 直ちに |
| 太陽建機レンタル | 第9条(物件の検収)物件受領後直ちに、納品書などの内容に基づき、規格・仕様・性能・機能および数量等に適合するか検証する | 直ちに |
「直ちに」という言葉が両社とも使われています。これは法令用語で、急ぎ方を表す3段階のうち一番厳しいものです。
| 言葉 | 意味 |
|---|---|
| 直ちに | 即時に。いかなる理由があっても遅れてはならない |
| 速やかに | 合理的な準備期間を踏まえて、できるだけ早く |
| 遅滞なく | 正当・合理的な理由による遅れは許される |
一番上が使われている、ということです。
言わなかったら「正常に引き渡された」ことになる
そして、その先にもう1条あります。ここが本題です。
引渡し後、当日中に甲が乙に対し第9条2項の通知をしなかった場合には、甲の検収時に契約不適合の発見が不可能又は著しく困難なものであった場合を除き、物件は正常な状態で引き渡されたものとする(太陽建機レンタル レンタル約款 第10条)
「甲」が借りる側、「乙」がレンタル会社です。分かりやすく言い換えると、こうなります。
その日のうちに言わなければ、全部揃っていたことにしますよ。
アクティオの約款にも同じ趣旨の条文があります。表現は違いますが、検収のときに見つけられたはずのものは、引き渡し済みとして扱うという点は共通です。
ただし、どちらの約款にも「発見が不可能または著しく困難だった場合を除く」という例外が付いています。開けられない梱包の中身だった、といったケースまで切り捨てているわけではありません。ここは覚えておいてください。
売買なら、法律が同じことを決めています
「約款で勝手に決めているだけでは?」と思われるかもしれません。そうではありません。
商法526条という条文があります。会社どうしの売買では、買った側は受け取ったら遅滞なく検査し、契約に合わない点を見つけたら直ちに通知しなければならない。しなければ、代金の減額も、損害賠償も、契約の解除も請求できなくなる、という規定です。
レンタルは売買ではなく賃貸借なので、この条文がそのまま適用されるわけではありません。だから各社が約款で同じ仕組みを置いています。法律の世界でも業界の中でも、「受け取った側が、受け取った時点で確認する」で一貫しているということです。
受領書や納品書にサインをもらうのも、同じ理由です。うちでも必ずいただいています。あれは形式ではなく、「この内容で受け取りました」という記録です。
※約款の中身は会社ごとに違います。期限を「当日中」と明記している会社もあれば、「直ちに」だけの会社もあります。取引先の約款を一度だけ読んでおいてください。5分で済みます。
なお、ここで言っている「検収」は受け取った瞬間に1回だけやる確認のことです。借りている間の日常点検(給油・グリスアップ・異音の確認など)は別の条文で、こちらも借りている側の義務になっています。料金と約款の全体像は建機レンタル料金の仕組み|約款のどこに何が書いてあるかにまとめてあります。
実際にあった話:5分の確認が、1時間になった
先日、こういうことがありました。
大型の発電機と、100Vの分電盤、それに接続用の付属品一式をまとめて現場へ配達しました。しばらくして電話が鳴ります。
「発電機と分電盤がつなげない。赤・青・白・黒・緑の端子が付いたプラグが足りない」
こちらの手順は決まっています。納品伝票を出し、その日の納品写真を確認します。
ここに時間がかかりました。その日の納品写真は300枚以上あります。その中から該当する現場の、該当する1枚を探し出し、写っているものを伝票と突き合わせる。結果、付属品はすべて揃って積まれていました。その旨をお伝えします。
するとお客さんは「直接見てきます」と言って、電話を切りました。しばらくして、折り返しの連絡が来ます。
「すべて揃っていました」
最初の電話は、現場のスタッフから上がってきた「無い」という報告をもとにかけられたものでした。電話をかけた方は、現物を見ていませんでした。
責めたい話ではありません。現場は忙しく、上がってきた報告を信じるのは自然なことです。ただ、事実としてこの順番だと、現場の5分がレンタル会社の1時間になります。そして写真を探していた1時間は、別のお客さんの配車や電話に使えたはずの時間でした。
順番を逆にするだけで、この1時間は消えます。
【第2部】借りる側が、自分を守るためにやること
ここからは借りる側の話です。約款の作りが上のとおりである以上、確認しないと最終的に損をするのは借りた側だからです。4つだけです。
① 受け取ったその場で、写真を1枚撮る
これが一番効きます。荷降ろしが終わった状態を、付属品まで入るように1枚。10秒です。
この1枚があると、立場が変わります。本当に足りなかったとき、「積まれていなかった」をあなたの側から示せるからです。逆に揃っていれば、現場の誰かが探し忘れているだけだと、その場で分かります。
スマホの写真には撮影日時が残ります。受領書のサインと写真がそろえば、後から揉めようがありません。
② 「無い」と言う前に、自分の目で見る
現場から「足りない」と報告が上がってきたとき、その報告は伝聞です。誰かが探して見つからなかった、という話であって、積まれていなかったという事実の確認ではありません。
付属品は、機械のカゴの中、別の箱、荷台の隅など、本体と離れた場所に積まれていることがあります。探す人が置き場所を知らなければ、当然「無い」になります。
現物を見るのに5分です。その5分を使わずに連絡すると、あなた自身の信用も少しずつ減ります。「あそこはよく間違える」と思われて得することは何もありません。
③ 本当に足りないときは、その日のうちに電話する
確認して、本当に無かった場合。すぐ電話してください。翌日まで待たないでください。
その日のうちなら、多くの場合ただ届けるだけで終わります。翌日以降になると、こちらは「渡したはずだ」の証明から始めることになります。約款上もあなたが不利になります。同じ不足でも、かかる時間と結果がまったく違います。
④ 品名が分からなくても、写真なら伝わります
付属品の正式名称は、現場とレンタル会社で呼び方が違うことがあります。無理に名前を思い出そうとしなくて大丈夫です。
「この機械の、ここに挿すものが無い」と分かる写真が1枚あれば、たいてい特定できます。電話口で「赤いやつ」「四角いやつ」とやりとりするより、写真1枚のほうが早く終わります。
同じ条文は「傷」にも効きます
ここまで見てきた検収の条文は、付属品だけの話ではありません。機械の傷や不具合にも同じように効きます。
借りた時点ですでに傷があったのに、その場で言わなかった。すると返却時の点検で見つかり、あなたが付けた傷として扱われることになります。約款上「正常な状態で引き渡された」ことになっているからです。
借りるときの5分をサボると、返すときに請求書という形で戻ってくるということです。何をどこまで請求されるのかはレンタル機の返却前チェックリスト|追加請求になる7項目にまとめてあるので、そちらを見てください。①の写真1枚は、そこでもそのまま効きます。
よくある質問
Q. 受領書にサインしてしまいました。もう何も言えませんか?
A. そんなことはありません。約款には「検収時に発見が不可能または著しく困難だった場合を除く」という例外があります。開けられない梱包の中身だった、というような事情があれば話は別です。ただし原則は当日中なので、気づいた時点ですぐ連絡してください。
Q. 無人の現場に置いていってもらった場合はどうなりますか?
A. 誰も立ち会わない形にしたときの扱いは、会社ごとに違います。後から揉めやすいパターンでもあります。頼むときに「不足があった場合はいつまでに言えばいいか」を先に確認しておくと安全です。
Q. 毎回確認するのは正直きついのですが
A. 全部を細かく数える必要はありません。写真を1枚撮るだけで十分です。後から必要になったときに、そこに写っています。10秒の作業です。
Q. レンタル会社側が積み忘れることはないんですか?
A. あります。人がやっている以上ゼロにはなりません。だからこそ、こちらも納品時に写真を撮っています。記録がある側同士なら、話は5分で終わります。困るのは、どちらにも記録がないときです。
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まとめ
- 受け取った物を確認する義務は、借りた側にあります
- 約款の期限は「直ちに」または「当日中」。法令用語の中で一番厳しい言葉が使われています
- その日のうちに言わないと、「正常に引き渡された」とみなす条項が普通に入っています
- 売買なら商法526条が同じことを決めています。受け取った側が確認する、で一貫しています
- 自衛は簡単です。受け取ったら写真を1枚。「無い」と言う前に自分の目で見る
- 同じ話は傷や不具合にも効きます。借りるときに言わないと、返すときに払わされます
難しい手続きの話ではありません。受け取ったときに5分使うか、後から1時間使うか、それだけの違いです。
※本記事は2026年9月時点で公開されている各社の約款および法令をもとに作成しています。約款の内容は会社ごとに異なり、改定されることもあります。実際の契約については、必ず取引先の最新の約款と契約書をご確認ください。


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