2サイクルのチョークの使い方|エンジンを一発でかける

2サイクルエンジンのチョークレバーとプライミングポンプに手を添える作業者とチェンソー 工具

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私は建設機械のレンタル会社で受付をしていて、業務のひとつに燃料の管理があります。軽油、ガソリン、アドブルー、2サイクルオイル。そのうち2サイクルの機械——刈払機、エンジンカッター、チェンソー、エンジンブロワ——には、他の機械にはない厄介な部品がひとつ付いています。

チョークです。

これがまた、正体を知らないまま「なんか引くやつ」として扱われている。引けばかかると思っている人がいて、逆にかからないから引き続ける人がいて、戻し忘れたまま黒い煙を吐かせている人がいる。そして共通して言うのが「この機械、調子悪い」。——調子が悪いのは、たいてい機械ではありません。

これは一般論として書いているのではありません。受付をしていると「エンジンがかからない」という連絡は実際に来ます。多いのは草刈機・チェンソー・エンジンカッターの3つです。そしてそのうちのいくつかは機械の故障ではなく、チョークの使い方を知らないまま引き続けて、燃料を濃くしすぎている状態でした。この記事を書いているのは、それが理由です。

この記事は、チョークという部品が何をしている装置なのかを理解して、冷えているときと温まっているときで手順を変えるところまで持っていくための記事です。あわせて、かからないときの切り分けの順番と、かぶらせてしまったときの戻し方、そしてリコイルスターターを壊す引き方までまとめました。全部、メーカーの取扱説明書に当たって書いています。

先に断っておくと、数値も手順も機種によって違います。この記事に出てくる回数やmmは「あるメーカーの説明書ではこう」という一例です。正解は、あなたの機械の取扱説明書にしか書いてありません。

  1. 結論:覚えるのは3つだけ
  2. 【第1部】チョークとは何をしている部品か
    1. 「空気の蓋」だと思えばいい
    2. なぜ冷えているときは濃くしないといけないのか
    3. 「閉」がチョークを使う位置、「開」が普通の位置
  3. 【第2部】冷えているときの、正しい始動手順
    1. 0. 給油した場所から3m以上離れる
    2. 1. 燃料コック(付いている機種だけ)
    3. 2. 停止スイッチを「運転/START」側にする
    4. 3. プライミングポンプ(プライマポンプ)を押す
    5. 4. チョークを「閉」にする
    6. 5. スロットルを始動位置(ハーフスロットル/始動ロック)にする
    7. 6. 姿勢を作る(ここを飛ばす人が多い)
    8. 7. リコイルを引く(引き方は第5部で詳しく)
    9. 8. 初爆したら、チョークを戻す
  4. 【第3部】温まっているときは、チョークを引かない
    1. メーカーははっきり書いている
    2. 燃料補給や休憩のあとが、一番かぶらせやすい
    3. 「温間でもチョークを一度引く」機種がある理由
    4. 冷間と温間の違い(早見表)
  5. 【第4部】かからないときの、見る順番
    1. ①スイッチ:メーカーが最初に書く項目
    2. ②古い燃料:ここが本命であることが多い
    3. ⑤エアクリーナ:詰まりは「常時チョーク」と同じ
  6. 【第5部】かぶらせた(プラグが濡れた)ときの戻し方
    1. 手順
    2. 4のときの注意
    3. そもそも、そこまで濃くする前に止める
    4. 電極すきまは、機種によって違う
  7. 【第6部】リコイルスターターを壊す引き方
    1. 壊す引き方(全部、説明書に「やるな」と書いてある)
    2. 正しい引き方は2段階
    3. デコンプバルブが付いているなら、押す
  8. よくある質問(FAQ)
    1. Q. チョークを引いたまま作業してしまった。壊れる?
    2. Q. 何回引いてもかからない。あと何回引けばいい?
    3. Q. 休憩明けにかからなくなった。朝はかかったのに
    4. Q. プライミングポンプは何回押すのが正解?
    5. Q. プラグを外して乾かしたら、すぐかかる?
    6. Q. エアクリーナはエアガンで吹いてもいい?
    7. Q. 借りた機械がかからない。自分でどこまで触っていい?
  9. あわせて読みたい
  10. まとめ

結論:覚えるのは3つだけ

  1. チョークは「冷えているとき」だけ閉じる。初爆したら戻す。それ以上は用がない
  2. 温まっている機械にチョークは引かない。引いた分だけかぶりに近づく
  3. かからないときにロープを引き続けるのは、作業ではなく悪化。引く前に、見る順番が決まっている

この3つを外していなければ、2サイクルの機械はだいたい一発でかかります。逆に、この3つのどれかを外している状態で20回引き続けても、一生かかりません。むしろ引くほど遠ざかります。理由はこのあと書きます。

【第1部】チョークとは何をしている部品か

「空気の蓋」だと思えばいい

エンジンは、ガソリンだけでは動きません。空気と燃料を混ぜた「混合気」を吸い込んで、圧縮して、火花で燃やしています。その混ぜる仕事をしているのがキャブレターです。

チョークは、そのキャブレターの空気の入口に付いている蓋です。閉じると空気が入りにくくなる。空気が減れば、相対的に燃料の割合が濃い混合気ができあがる。それだけの装置です。

つまりチョークは「始動ボタン」ではありません。「濃くするレバー」です。ここを間違えていると、かからないときに引く、という一番やってはいけない対応に一直線で向かいます。

なぜ冷えているときは濃くしないといけないのか

燃えるのは気化したガソリンであって、液体のガソリンではありません。そしてガソリンは、冷えていると気化しにくい。冬や早朝に始動しにくいのは、これが理由です。

冷えたエンジンでは、送り込んだ燃料のうち一部しか気化してくれません。「送った量」に対して「燃える量」が足りない状態です。だから、最初だけ、多めに送る。それがチョークの仕事です。

逆に言えば——エンジンが温まっていれば、燃料は勝手に気化します。そこへチョークで濃い混合気を送り込むと、余った燃料が燃え残ってシリンダーの中に溜まります。これが「かぶる」という状態です。温間でチョークを引いてはいけない理由は、この一行に尽きます。

「閉」がチョークを使う位置、「開」が普通の位置

ここも混乱しやすいところなので整理しておきます。取扱説明書の書き方はこうです。

  • 「閉」=チョーク弁を閉じる=空気を絞る=濃くなる冷間始動のときだけ
  • 「開」=チョーク弁が開いている=普通の状態始動後・温間始動・作業中はずっとこっち

あるメーカーの刈払機の説明書は、冷間始動で「チョークレバーを『閉』の位置にしてください」、始動後に「チョークレバーを『開』の位置に戻してください」と書いています。レバーを「引く」のか「押す」のか、上が閉なのか下が閉なのかは機種でバラバラなので、言葉ではなく自分の機械の表示を見てください。

なお、車やバイクでおなじみのオートチョークは、バイメタルやワックスのサーモスタットが温度で伸び縮みして自動でやってくれる仕組みです。現場の2サイクル機は、たいてい手動。つまり戻すのも人間の仕事だ、ということです。

【第2部】冷えているときの、正しい始動手順

機種で細部は違いますが、順番の意味は共通です。1つずつ、なぜそうするのかを書いておきます。

0. 給油した場所から3m以上離れる

手順の前の手順です。取扱説明書には「少なくとも3m以上離れた所で始動させてください」とあります。こぼれた燃料と気化したガソリンが足元にある場所で火花を飛ばす行為だから、という単純な話です。給油してその場で引くのは、現場でいちばんよく見る、いちばん危ない手順です。

あわせて、作業者以外の人を作業場所から遠ざけてください。エンジンカッターの説明書にも明記されています。

1. 燃料コック(付いている機種だけ)

コックが付いている機械なら、「開」にしないと燃料が来ません。ここが閉じたままだと、あとの手順を完璧にやってもかかりません。

ただし正直に書くと、今回確認した刈払機・チェンソー・エンジンカッター・パワーカッター・エンジンブロワの取扱説明書には、燃料コックの記載がありませんでした。手持ちの2サイクル機には、そもそも付いていないものが多いということです。あるかないかを、まず自分の機械で確認してください。「無い機種でコックを探して時間を溶かす」のも、それはそれで無駄です。

2. 停止スイッチを「運転/START」側にする

あるメーカーのFAQは、「エンジンがかからない」への回答として点検項目を2つしか挙げていません。その1つ目がこれです。

エンジンのストップスイッチが入ったままになっていないかご確認ください。

メーカーが真っ先に書くくらい、これで止まっている人が多いということです。笑い話に聞こえますが、前の人が停止スイッチを切ったまま置いた機械を、翌朝別の人が引く——という流れは、道具を共用している現場ならいくらでも成立します。引く前に見る。3秒です。

3. プライミングポンプ(プライマポンプ)を押す

透明な半球状のポンプです。役割は「キャブレターまで燃料を呼んでくる」こと。長く止めていた機械は、ここが空になっています。

押す回数の書き方はメーカーでバラバラです。

  • 刈払機:「燃料がプライマポンプに入るまで、繰り返し押してください」
  • エンジンブロワ:「7〜10回程度押す」
  • エンジンカッター:「ポンプ内に燃料が入り、泡が少なくなるまで押してください」
  • パワーカッター:「燃料がダイアフラムを満たし始めるまで繰り返し押します(約6回)」

共通しているのは「回数」ではなく「燃料が来たか」で判断しているという点です。透明なのは、中を見るためです。数を数えるより、燃料が満ちて泡が減ったかを見てください。

4. チョークを「閉」にする

ここでようやくチョークです。冷えているときだけ。それ以外の状況では触らない。

5. スロットルを始動位置(ハーフスロットル/始動ロック)にする

ここが機種差の大きいところです。3パターンあります。

  • スロットルは低速側のまま…刈払機の説明書は「スロットルレバーが低速側(始動位置)になっていることを確認してください」
  • スロットル固定レバーを半開にする…エンジンブロワは「スロットルレバーを握りスロットル固定レバーを半開の位置に動かす」
  • チョークを引くと自動で始動ロックがかかる…エンジンカッターの説明書は「チョークを引くと、始動ロックがかかります」。パワーカッターも「チョークコントロールを完全に引き出すことにより、スタートスロットル位置とチョークの状態にすることができます」

3つ目のタイプが、混乱の元です。「チョークレバー」と呼ばれている一本のレバーが、チョークとスロットル固定の2役を兼ねている。だから「温まっていてもチョークを一度引く」という、一見矛盾した手順が出てきます(後述します)。

6. 姿勢を作る(ここを飛ばす人が多い)

エンジンカッターの説明書はこう書いています。

本機を地面におき、右足でリヤハンドルをしっかりと固定します/左手でフロントハンドルをつかみ、右手でリコイルスターターを引きます

片手で持ち上げて振り回す始動は、どのメーカーの説明書にも書かれていません。本体が固定されていないと、引く力が本体を動かすほうに逃げてクランクが回りません。かからないのではなく、回していないだけというケースです。

7. リコイルを引く(引き方は第5部で詳しく)

要点だけ先に。「軽く引いて、重くなった位置から勢いよく」です。エンジンブロワの説明書は「リコイルスタータノブを軽く引き、重くなった位置から勢いよく引く」、チェンソーメーカーの公式手順も「抵抗を感じるまでゆっくりと引いてください。その後で、エンジンが初爆するまで何度か勢いよく引っ張ってください」としています。

8. 初爆したら、チョークを戻す

ここが一番大事な分岐です。「エンジンがかかったら」ではありません。「爆発音がしたら」です。

チェンソーとエンジンカッターの説明書は、どちらも「爆発音がしたらチョークをもとの位置に押し込んでください」と書いています。一瞬かかって、すぐ止まる。あの「ボスッ」が合図です。そこで戻さずに引き続けると、濃い混合気を送り続けることになります。

戻し方の表現はメーカーで割れています。

  • パワーカッター:「エンジンが開始したら素早くチョークコントロールを押します」
  • エンジンブロワ:初爆後「チョークレバーを徐々に開位置に戻す」

ここも自分の機械の説明書が正です。ただし共通する注意があって、刈払機の説明書には「気温が低いときまたはエンジンが冷えているときは、急にチョークレバーを開くと、エンジンが停止する場合」があると書かれています。寒い朝はゆっくり戻す。これは覚えておいて損がありません。

【第3部】温まっているときは、チョークを引かない

メーカーははっきり書いている

あるチェンソーメーカーの公式ページは、温間始動についてこう書いています。

エンジンの温度が高い場合には、チョークなしで始動します。上記の手順は冷機エンジンの始動方法と同じですが、チョーク操作は省略します。

刈払機の説明書も、温間始動の手順に「チョークレバーが『開』の位置になっていることを確認してください」という一文をわざわざ入れています。「開けろ」ではなく「開いていることを確認しろ」。戻し忘れる人が多いということです。

燃料補給や休憩のあとが、一番かぶらせやすい

状況を整理すると、こういうことです。

  • 作業を止めた直後の機械はまだ熱い
  • 熱いエンジンでは、燃料は放っておいても気化する
  • そこへチョークを閉じてさらに濃い混合気を送る
  • 燃えきらなかった燃料がプラグを濡らす
  • 火花が飛んでも、濡れたプラグでは着火しない

そして厄介なのが、この状態で人は「かからないな」と言ってさらに引くことです。引けば引くほど燃料が入り、状況は悪くなっていきます。「引き続ければそのうちかかる」という考え方が、一番機械を止めます。

「温間でもチョークを一度引く」機種がある理由

ここでさっきの伏線が回収されます。エンジンカッターやチェンソーの説明書には、温間始動でこう書かれているものがあります。

エンジンが暖まっているときは、チョークを一度引いてから戻してください

矛盾しているように見えますが、同じ説明書に「チョークを引くと、始動ロックがかかります」と書かれています。つまりこの操作は「濃くするため」ではなく、レバーが兼ねているスロットル固定をかけるための操作だと読めます。実際、引いてすぐ戻すので、チョーク自体は開いた状態になります。

ただしこれは私が2つの記述を突き合わせた解釈で、「始動ロックをかけるためだ」と明記した資料に当たれたわけではありません。断定はしません。大事なのは、あなたの機械の説明書が温間始動で何をしろと書いているかです。「一度引いて戻せ」と書いてあるならそれが正解、「開のままにしろ」と書いてあるならそれが正解。他人の機械の手順を真似ないでください。

冷間と温間の違い(早見表)

手順冷えているとき(冷間)温まっているとき(温間)
停止スイッチ運転/START側運転/START側
プライミングポンプ燃料が満ちて泡が減るまで数回(機種による)
チョーク「閉」にする「開」のまま。※機種により「一度引いて戻す」
始動後初爆したらチョークを「開」へ戻す操作は不要

【第4部】かからないときの、見る順番

引く回数を増やす前に、この順番で見てください。上から順に「タダで直る可能性が高い順」に並べています。

見るところそうだった場合の対応
停止スイッチが「停止」側になっていないか運転側へ。これで直るケースをメーカーが筆頭に挙げている
燃料が古くないか(前の季節の混合が入っていないか)抜いて、新しい混合に入れ替える
混合比とオイルのグレードが機械の指定と合っているか合っていなければ入れ替える(詳細は混合燃料の記事へ)
点火プラグが濡れていないかかぶり。第5部の手順で戻す
エアクリーナが詰まっていないか清掃。空気が来なければ、それは常時チョーク状態と同じ

⑤まで見て直らなければ、キャブレターの詰まりなど、素人が手を出す範囲を超えています。販売店か貸出元に出してください。引き続けても、燃料を送り込んでいるだけです。

①スイッチ:メーカーが最初に書く項目

前述のとおり、あるメーカーのFAQは不始動の点検項目を2つしか挙げておらず、1つ目が停止スイッチ、2つ目が「点火プラグが濡れていないか」です。この2つで大半が説明できてしまう、ということでもあります。

②古い燃料:ここが本命であることが多い

混合燃料には期限があります。メーカーの書き方はこうです。

  • 刈払機・チェンソー:「2〜3か月以上保存した燃料、異物が混入した燃料を使用すると故障の原因となります」
  • エンジンブロワ:「混合燃料は1日で使いきる量だけ作ってください。1ヶ月以上経過すると燃料が腐敗する恐れがあります」
  • パワーカッター:「1ヵ月分以上の混合燃料を一度に作らないでください。」

数字は割れていますが、「作り置きするな」という向きは全社一致です。倉庫の隅で越冬した混合缶は、燃料ではなく始動不良の原因です。いくら正しくチョークを操作しても、腐った燃料はかかりません。

ひとつ補足します。レンタルで借りた機械の場合、燃料が古いことは基本的にありません。うちでは混合燃料を会社で作っていて(比率は25対1)、貸し出すときは満タン、混合を入れたまま長期在庫になっている機械もありません。

つまり借りた機械がかからないときは、②の「古い燃料」の線は薄いということです。その場合は①のスイッチと④のプラグの濡れ、そしてチョークの操作を先に疑ってください。逆に、自分の倉庫から久しぶりに出した機械なら、②が本命になります。

ここから先、記事で触れている品目に楽天のリンクを置いておきます。ただし私自身が何種類も使い比べたわけではないので、「これが一番いい」という書き方はしません。仕様として外せない条件だけを「買う前に確認したい点」として添えます。

買う前に確認したい点

  • 自分の機械の指定比率と同じものを買う(25:1用と50:1用は別物。比率違いを買っても使えない)
  • 4サイクル機には使えない
  • 保管・運搬に消防法令がかかる。容器と保管量を確認する
  • 混合比とJASOグレードの詳しい話は2サイクルの混合燃料の記事にあります

混合比の決まり方、JASOグレード(FB・FC・FD)の意味、作り方の手順は混合ガソリンの作り方|25:1と50:1の見分け方にまとめてあります。比率とグレードはセットで決まっているので、片方だけ合わせても守れていません。携行缶の法令や燃料の保管については重機の燃料の入れ間違いは高くつく|軽油とアドブルーのほうが詳しいです。

⑤エアクリーナ:詰まりは「常時チョーク」と同じ

チョークが「空気を絞る装置」だとわかれば、エアクリーナの目詰まりが何をしているかも自動的にわかります。空気の通り道がふさがれている=チョークを閉じっぱなしにしているのと同じということです。かかりが悪い、吹け上がらない、黒煙が出る。全部つながります。

清掃の頻度と方法もメーカーが書いています。ある刈払機の点検・整備表では、エアクリーナの掃除は「毎月」の項目に入っています。洗い方は、あるチェンソーの説明書で「エアクリーナをエルボから取りはずし、ゴミを落としてから中性洗剤で良く洗ってください」。

そして、やりがちな一発アウトがこれです。

注記!エアフィルターは、圧縮空気で掃除しないでください。

現場にエアが来ていると、つい吹きたくなります。が、メーカーが名指しで止めています。フィルターの目が壊れれば、そこから先はゴミがキャブレターに直行します。掃除したつもりが寿命を縮める典型例です(※これは、あるメーカーのパワーカッターの説明書の記載です。機種によって指示が違う可能性があるので、自分の機械の説明書を確認してください)。

【第5部】かぶらせた(プラグが濡れた)ときの戻し方

やってしまったものは仕方ありません。復旧手順はメーカーが書いています。そして各社ほぼ同じことを言っています。

手順

  1. エンジンを止め、プラグキャップを外す
  2. プラグレンチで点火プラグを外す…あるメーカーは「付属のプラグレンチでゆるめて取り外し」と書いています。まず工具袋を見てください。付属していることがあります
  3. 電極部が濡れているかを見る…「スパークプラグの電極部が濡れているかどうか調べてください」。濡れていれば、かぶりで確定です
  4. プラグを外したまま、リコイルを数回引いて空転させる…「スパークプラグを抜き取った状態でリコイルスターターを引き、数回空転させて燃料をシリンダ内から排出してください」。ある刈払機の説明書は「ゆっくり数回引いて余分な燃料を出してください」としています
  5. プラグを拭いて乾かす…「点火プラグを外しよく拭き取り乾燥させる」。汚れているならワイヤブラシで落とす、と書いている説明書もあります
  6. プラグを戻し、チョークは「開」のまま、もう一度引く

6が肝心です。せっかく燃料を出したのに、またチョークを閉じて引いたら振り出しに戻ります。かぶりの原因は「濃すぎ」なので、リカバリーで濃くしてどうするんだという話です。

4のときの注意

取扱説明書には手順としてしか書かれていませんが、プラグを抜いた穴からは、当然ながら燃料が出ます。向きに気をつけて、周囲に火気がない状態でやってください。外したプラグの火花を確認する作業を、燃料が噴いている穴のそばで同時にやるのは避けたほうがいいと考えています。

買う前に確認したい点

  • 品番は機械ごとに違う。取扱説明書の指定品番で買う(この品番が自分の機械に合うとは限らない)
  • メーカーが純正品を指定している機種がある
  • 電極すきまの指定値も機種で違う(今回当たった資料では刈払機0.6〜0.7mm、パワーカッター0.5mm)
  • 予備を1本、機械と一緒に持っておくと現場で止まらない

買う前に確認したい点

  • サイズが合うかを先に確認する
  • 機械に付属している機種がある。買う前に工具袋を見る
  • 深さのあるソケットでないと届かない機種がある

そもそも、そこまで濃くする前に止める

かぶらせないための一文が、はっきり書かれている説明書があります。これは2サイクルの手持ち機ではなく、あるメーカーのエンジンポンプの説明書の記載ですが、チョークの扱い方として引用しておきます。

リコイルスターターを4〜5回引いても始動しない場合は、チョークを下側(開)にし、リコイルスターターを引いてください。それでも始動しない場合は、チョークレバーやスロットルレバーの位置を変えて、繰り返してください

チョークを閉じたまま引き続けるのは4〜5回まで。これがひとつの目安になります。10回、20回と引くのは、努力ではなく、燃料をシリンダーに注ぎ込む作業です。

正直に書くと、今回当たった刈払機・チェンソー・エンジンカッターの説明書には「何回まで」という数字はありませんでした。ですので4〜5回という数字を自分の機械に当てはめて断言はできません。ただ「かからないならチョークを開けてから引く」という向きは、どの機械でも共通して成り立ちます。濃くして駄目だったのだから、次に試すのは薄いほうです。

電極すきまは、機種によって違う

プラグを外したついでに見る人が多いので書いておきます。指定値は機種で違います。今回当たった資料では、ある刈払機が「0.6〜0.7mm」、あるパワーカッターが「電極ギャップが0.5mm」倍近く違うわけではありませんが、揃っていません。

プラグそのものも、「純正品(チャンピオン CJ6Y)をご使用ください」のように品番を指定している説明書があります。「同じ形だから」で買わないでください。

【第6部】リコイルスターターを壊す引き方

最後に、機械そのものより先に壊れる部品の話です。リコイルスターターのロープは消耗品ですが、寿命を自分で縮めている人がかなり多い。各社の説明書が、わざわざ注意書きを入れています。

壊す引き方(全部、説明書に「やるな」と書いてある)

  • ロープを最後まで引ききる…「リコイルスターターを最後まで引かないでください。ロープの寿命が短くなります」「(ロープは一杯に引ききらないでください)」
  • 引いた手をパッと放す…「リコイルスターターを急に離さないでください」「引いたスタータハンドルは、その位置から手放さずに戻してください」「リコイルスタータノブは持ったままゆっくりと元の位置に戻してください」
  • ロープを手に巻き付ける…「スターターロープは絶対に手に巻き付けないでください。
  • 力任せに引く…「強く引きすぎるとひもが切れたり故障の原因となります

「引ききってパッと放す」は、この4つのうち2つを同時にやっています。そして、かからないときほど人はこの引き方になります。イライラしている人ほど、機械を壊す引き方をする。よくできた仕組みだと思います。

これは想像で書いているのではありません。ロープを切って返してくる人は実際にいます。うちの運用では、1日に2回以上切って持ってきた場合に請求の話になります。

この数字の意味を考えてみてください。1回目は、まあ起こります。消耗品ですから。問題は同じ日にもう一度切る人がいるということです。1本目が切れた時点で引き方を変えていれば、2本目は切れません。つまり2本目は、機械の寿命ではなく引き方の結果です。

正しい引き方は2段階

メーカーの表現はほぼ一致しています。

リコイルスタータノブを軽く引き、重くなった位置から勢いよく引く

抵抗を感じるまで、右手でスターターロープをゆっくりと引いてください。その後で、エンジンが初爆するまでスターターロープを何度か勢いよく引っ張ってください。

「重くなった位置」=圧縮が始まった位置です。そこまでの遊びをゆっくり取ってから、短く、鋭く引く。腕が伸びきるまで引く必要はありません。クランクを勢いよく回せればいいのであって、ロープを長く出すことに意味はない。

そして戻すときは手を添えたまま。放り出せば、ロープはガイドに擦れながら猛烈な勢いで巻き取られます。ここで切れます。

デコンプバルブが付いているなら、押す

排気量の大きい機種にはデコンプレッションバルブ(減圧バルブ)が付いていることがあります。役割はメーカーの説明そのままで、「シリンダー内の圧力を下げるため」。押してから引くと軽くなります。

別のメーカーも「チェンソーに減圧バルブが装備されている場合は、それを押してください。これにより、エンジンがスタートしやすくなり、チェンソーのスタートが楽になります」としています。付いているのに使っていない人がいます。ボタンひとつで引く力が変わるので、自分の機械にあるかどうか一度探してみてください。

よくある質問(FAQ)

Q. チョークを引いたまま作業してしまった。壊れる?

A. すぐに「開」に戻してください。チョークは空気を絞って混合気を濃くする装置なので、閉じたままの運転は濃い混合気を送り続けることになります。今回当たった取扱説明書には「チョークを閉じたまま運転するとこうなる」という明文はありませんでした。ただ、メーカーが不始動の点検項目に「点火プラグが濡れていないか」を挙げていること複数社が「燃料を吸い込みすぎたとき」の復旧手順を載せていることから、濃すぎる状態が始動不良につながることは読み取れます。異常を感じたら販売店か貸出元に相談してください。

Q. 何回引いてもかからない。あと何回引けばいい?

A. 引く回数の問題ではありません。あるメーカーのエンジンポンプの説明書は「リコイルスターターを4〜5回引いても始動しない場合は、チョークを下側(開)にし、リコイルスターターを引いてください」としています(※2サイクルの手持ち機の説明書に同じ数字は見つけられませんでした)。数字はさておき、かからないときは一度チョークを開けてから引く。それでもかからないなら、第4部の順番で①スイッチ→②燃料の古さ→③混合比→④プラグの濡れ→⑤エアクリーナを見てください。

Q. 休憩明けにかからなくなった。朝はかかったのに

A. 温まっている機械にチョークを引いていませんか。あるメーカーの公式手順は「エンジンの温度が高い場合には、チョークなしで始動します。(中略)チョーク操作は省略します」と明記しています。別のメーカーの刈払機の説明書も、温間始動の手順に「チョークレバーが『開』の位置になっていることを確認してください」と入れています。朝と昼で手順が違う、と覚えてください。

Q. プライミングポンプは何回押すのが正解?

A. 回数ではなく「燃料が来たか」で判断します。説明書の書き方は「燃料がプライマポンプに入るまで繰り返し押す」「7〜10回程度」「泡が少なくなるまで」「約6回」とバラバラですが、全社が中身の状態を基準にしています。ポンプが透明なのは中を見るためです。回数を数えるより、燃料で満たされて泡が減ったかを見てください。

Q. プラグを外して乾かしたら、すぐかかる?

A. かぶりが原因ならかかります。ただしプラグを拭くだけでなく、シリンダー内に溜まった燃料を出す工程を飛ばさないでください。説明書は「スパークプラグを抜き取った状態でリコイルスターターを引き、数回空転させて燃料をシリンダ内から排出してください」としています。そして戻したあとはチョークを「開」で始動すること。ここで閉じたら元の木阿弥です。

Q. エアクリーナはエアガンで吹いてもいい?

A. あるメーカーのパワーカッターの説明書は「注記!エアフィルターは、圧縮空気で掃除しないでください」と明記しています。別のメーカーのチェンソーは「ゴミを落としてから中性洗剤で良く洗ってください」としています。機種によって指示が違う可能性があるので、自分の機械の取扱説明書を確認してください。いずれにせよ、フィルターの目を壊すとキャブレターにゴミが直行します。

Q. 借りた機械がかからない。自分でどこまで触っていい?

A. スイッチ・チョークの位置・燃料の確認までは、その場でやって問題ありません。プラグの脱着も説明書に手順があります。ただしキャブレターの分解・調整から先は、貸出元に連絡してください。触った結果として不具合が出ると、話がややこしくなります。そして「かからない」と連絡するときは、①温間か冷間か ②チョークをどう操作したか ③何回引いたか ④プラグは濡れていたか、この4つを伝えてもらえると切り分けが早く済みます。「かからない」だけでは、こちらも何も判断できません。

参考までに、私の場合は電話口で「チョークを開けて、もう一度引いてみてください」まで案内します。それで直ることが実際にあるからです。それでもかからなければ、機械を持ってきてもらいます。つまり、この記事に書いてあることは、電話でこちらが最初に言う内容とほぼ同じです。

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まとめ

チョークは「濃くするレバー」であって「始動ボタン」ではありません。冷えているときだけ閉じて、初爆したら戻す。温まっている機械には引かない。この理解があるだけで、始動の成功率は変わります。

そして、かからないときにやることは「引く回数を増やすこと」ではありません。スイッチ、燃料の古さ、混合比、プラグの濡れ、エアクリーナ。この順番で見るほうが、20回引くより確実に速い。そしてかからないときほど、一度チョークを開けてから引き直す。濃くして駄目だったなら、次は薄いほうを試す——それだけの話です。

最後にもう一度。ロープは引ききらない。手を添えたまま戻す。手に巻き付けない。機械より先に、たいていロープが死にます。「軽く引いて、重くなったところから勢いよく」——これだけです。

※本記事は2026年8月時点の情報をもとに作成しています。始動手順・プライミングの回数・電極すきま・燃料の保存期間・エアクリーナの清掃方法は、メーカーおよび機種によって異なります。必ずお使いの機械の取扱説明書をご確認ください。本文中の記述は、複数メーカーの取扱説明書および公式サイトの記載を「あるメーカーでは」という形で紹介したものです。

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