解体工事の見積もり|重機を借りて自分でやると安いか

住宅地で解体作業をする油圧ショベルと分別された廃材、待機するダンプ、チェックリストを持つ作業者 現場ノウハウ

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建設機械のレンタル会社で受付をしています。仕事のひとつが重機の配達手配なので、「この機械を何に使うのか」は毎日聞いています。

そのなかで出てくるのが「解体に使う」という用途です。多いのは業者さんですが、個人のお客さんも来ます。

そして、この記事のテーマになっている問いがあります。

「重機借りたら、自分で壊したほうが安いですよね?」

先に正直に書いておきます。私自身は、この質問を受付で言われたことが一度もありません。うちに解体の用途で来られるのは、ほとんどが業者さんだからです。これは私の体験談ではありません。

それでもこの記事を書くのは、機械を貸す側から見ると、この問いの答えがはっきりしているからです。解体業者の見積もりと、うちのレンタル料金表を見比べれば、日極料金だけなら桁が違います。そう思うのは自然です。

ただ、解体の費用は機械代でできていません。効いてくるのは、資格と、届出と、出てきたゴミをどう処理するかです。ここを飛ばして機械だけ借りると、たいてい途中で止まります。

この記事は、①自分でやる場合に本当に必要なもの②業者に頼む場合に見積書のどこを見るか、この2つを法令の条文まで当たって整理したものです。相見積もりの取り方も書きました。

結論:自分で壊して安くなるのは、かなり限られた条件のときだけ

先に結論を書きます。

  1. 床面積80㎡以上の建築物を壊すなら、届出が要る。しかも出すのは業者ではなく発注者または自主施工者、つまりあなたです
  2. 解体用の重機を動かすには、普通の「車両系建設機械」とは別の資格が要る場合がある
  3. 石綿(アスベスト)の事前調査は、原則として有資格者がやることになっている
  4. 出てきた廃棄物の処理が、いちばん厄介で、いちばん金がかかる

この4つを自分で回せるなら、機械を借りて自分でやる意味はあります。回せないなら、業者に頼んで、見積書を読める側になったほうが早い。この記事の後半は、そのための話です。

【第1部】自分で壊す場合に、機械のほかに要るもの

1. 建設リサイクル法の届出(出すのは施主です)

ここが一番見落とされます。一定規模以上の工事は、着工前に届出が必要です。京都府の案内では、対象となる規模がこう示されています。

工事の種類規模の基準
建築物の解体床面積の合計 80㎡以上
建築物の新築・増築床面積の合計 500㎡以上
建築物の修繕・リフォーム請負代金の額 1億円以上
その他の工作物(土木工事等)請負代金の額 500万円以上
出典:京都府「建設リサイクル法に基づく届出について」

そして、届出を出すのは——

  • 届出者:発注者または自主施工者
  • 期限:工事着手の7日前まで
  • 提出先:施工場所を管轄する自治体(都道府県または市)

「業者がやってくれるもの」ではありません。自分で壊すなら「自主施工者」として自分で出します。80㎡というのは、木造の一般的な2階建てなら普通に超えてくる面積です。

そして、着手の7日前まで。「明日から壊すのでユンボ持ってきて」という電話が来たとき、こちらが機械を出せても、この期限は動かせません。

2. 資格:「ユンボの免許」だけでは足りないことがある

掘削や整地に使う車両系建設機械の資格は、機体重量3トン以上なら技能講習、3トン未満なら特別教育、というのが基本です。ここまでは知られています。

問題は解体用のアタッチメントを付けたときです。千葉労働局の案内によると、平成25年(2013年)7月1日の労働安全衛生規則の改正で、車両系建設機械(解体用)の規制対象に「鉄骨切断機、コンクリート圧砕機、解体用つかみ機」が追加されました。以前から対象だったブレーカと合わせて、これらを扱う場合の区分はこうです。

  • 機体重量3トン以上…車両系建設機械(解体用)運転技能講習
  • 機体重量3トン未満…事業者による特別教育

整地用の技能講習を持っていても、解体用は別建てです。「ユンボは動かせるから大丈夫」で圧砕機を付けると、資格の範囲から外れている可能性があります。

アタッチメントを借りるときは、その機械と作業に対して自分の資格が有効かどうかを、貸出元に必ず確認してください。

貸す側が、どこで資格を確認しているか

まず、実際に解体で出ている機械を書いておきます。ユンボ(油圧ショベル)本体に、ブレーカと大割(ニブラ)。解体業者さんとの取引で多いのはこの組み合わせです。

ブレーカは、さきほどの「解体用」の代表格です。大割のような圧砕系のアタッチメントも、2013年の改正で対象に加わった区分に入るかどうかが問題になります。自分がこれから付ける機械がどの区分にあたるかは、必ず貸出元に確認してください。ここは「たぶん大丈夫」で進めていい場所ではありません。

解体用のアタッチメントは、うちでも貸し出しています。そのうえで、資格の確認の仕方は相手によって変えています。

  • 付き合いのある業者さん…その都度は聞きません
  • 初めての業者さん、そして個人のお客さん必ず聞きます

そして正直に書きますが、初めての方に聞くと、たいていは持っていません。結果として、そこでお断りすることになります。

もうひとつ、貸す側の本音も書いておきます。慣れていない方に解体用のアタッチメントを貸すのは、正直こわいです。資格の問題だけでなく、機械を壊される確率が上がるからです。アタッチメントは高価で、修理には時間もかかります。

つまり、借りる側から見た現実はこうです。解体用のアタッチメントは「お金を出せば借りられる道具」ではありません。資格と、扱った経験と、貸出元との関係。この3つで貸してもらえるかが決まります。逆に言えば、そこが揃っていれば話は早い。

受付として見ている範囲で言うと、個人のお客さんで、必要な免許を全部持っている方は稀です。それどころか、ユンボの免許すら持っていないことのほうが多い。業者さんとの一番の違いはここです。

そして、「アタッチメントを付けたら別の資格が要る」ということ自体を知らない方は、個人のお客さんのほとんどがそうです。悪気があるわけではありません。そういう区分があること自体、聞いたことがないというだけです。

だからこの記事は、費用の話より先に資格の話を書いています。ここは「知らなかった」で済む場所ではないからです。

もうひとつ、正直に書いておきます。個人のお客さんで、ユンボのアタッチメントの取り外し方をしつこく聞いてくる方には、貸し出しをしていません。

意地悪で言っているのではありません。付け外しの手順を知らないということは、その機械でその作業をやったことがない、ということだからです。アタッチメントは重量物で、着脱そのものに危険があります。そこを電話口で教わって現場で初めてやる、という状態で解体を始めるのは、資格の話より前に危ない。

断られたときは、そういう理由だと思ってください。そして、それでも自分でやりたいなら、順番は逆です。先に資格と経験を取る。機械は、そのあとでいくらでも借りられます。

3. 石綿(アスベスト)の事前調査は、原則として有資格者が行う

ここ数年でルールが変わった部分です。札幌市の案内によると、事前調査を有資格者が行う義務は、次のように段階的に始まっています。

  • 建築物:令和5年(2023年)10月1日着工の工事から…建築物石綿含有建材調査者等の有資格者
  • 工作物:令和8年(2026年)1月1日以降着工の工事から…工作物石綿事前調査者等の有資格者

さらに、調査結果の報告が必要になる規模も決まっています。環境省の案内ではこうです。

工事報告が必要になる規模
建築物の解体床面積の合計が80㎡以上
建築物の改造・補修請負代金の合計額が100万円以上
工作物の解体・改造・補修請負代金の合計額が100万円以上
出典:環境省「石綿事前調査結果の報告について」

そして報告義務を負うのは、環境省の記載では「元請業者又は自主施工者」です。ここでも「自主施工者」が名指しされています。自分で壊すなら、調査も報告も自分側の話になります。

古い建物ほど石綿が使われている可能性は上がります。「見た目で分かる」ものではありません。だから資格を持った人が調べる制度になっています。ここを飛ばすのは、法令以前に、自分と近所の人の肺の話です。

4. 出てきた廃棄物は、粗大ごみでは出せない

解体で出るものは、木材、コンクリート塊、瓦、石膏ボード、断熱材、サッシ、ガラス、それに家に残っていた家財。量が桁違いです。4トン車で何台という話になります。

正直に書きます。自分で解体した場合に出た廃棄物の扱いは、誰が壊したか・何の目的かによって区分が変わり、自治体によって運用も違います。ここは私が断定できる範囲を超えています。

機械を借りる前に、まず自分の市町村の担当課に「自分で解体したときの廃材はどう出すのか」を聞いてください。ここで詰まると、壊した瓦礫が敷地に積まれたまま動かせなくなります。実際、費用の大半はここに乗ってきます。

【第2部】人に頼むなら「登録」を持っているかを見る

「知り合いの土建屋に安くやってもらう」——これもよく聞く話です。ただ、解体工事を請け負うには許認可が要ります。

岡山県の案内によると、建設リサイクル法に基づく解体工事業の登録は、こう整理されています。

  • 解体工事業を営むには登録が必要(工事を行う都道府県ごとに)
  • 土木工事業・建築工事業・解体工事業のいずれかの建設業許可があれば、登録は不要
  • 1件あたり税込500万円以上の解体工事を行う場合は、建設業の許可が必要
  • 登録の有効期間は5年間
  • 現場ごとに技術管理者を置く必要がある
  • 登録を受けないまま解体工事業を営んだ場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金

読み替えるとこうです。「500万円未満だから許可は要らない」は正しくても、「だから何も要らない」は間違いです。500万円未満でも登録は要ります。

頼む側としてやることは1つだけです。登録番号か建設業許可番号を聞く。それだけで、その会社がこの制度の中にいるかどうかが分かります。嫌がる相手なら、その時点で判断材料になります。

【第3部】見積書は「坪単価」で比べない

ここからは、業者に頼むと決めた人向けです。

解体の見積もりは「坪いくら」で語られがちですが、坪単価だけで比べると、ほぼ確実に外します。同じ坪数でも、含まれている範囲が会社ごとに違うからです。

見積書で必ず内訳を分けてもらう項目

  • 本体の解体工事費(構造・階数・面積で変わる)
  • 廃棄物の処分費(品目ごとに単価が違う。ここが最大の変動要因)
  • 養生・仮設(足場、防音シート、散水)
  • 重機の回送費(現場までの往復。狭くて入らなければ手壊しになり、単価が変わる)
  • 付帯工事(ブロック塀、庭木、物置、カーポート、浄化槽、井戸)
  • 残置物の処分(家の中に残っている家財。ここは別料金になることが多い)
  • 諸経費(届出、申請、保険)

「一式」でまとめられた見積書は、比較できません。安く見えるのは、たいてい上のどれかが入っていないからです。

あとから増えやすい費用(ここを先に聞く)

  • 地中障害物…掘ったら昔の基礎、井戸、浄化槽、コンクリートガラが出てくる。掘るまで誰にも分かりません。「出たらどう精算するか」を契約前に決めておく
  • 石綿…事前調査で見つかれば、除去の工事が別に必要になる
  • 残置物…「家財は施主が処分」の前提で見積もっている場合がある
  • 道路と敷地の条件…前面道路が狭くて大型車が入らなければ、小運搬や手壊しが増える

この4つは見積もりの段階で「もし出たらどうなりますか」と聞いておくだけで、後のトラブルがかなり減ります。聞かれて嫌な顔をする業者は、そこで分かります。

相見積もりは「同じ条件」で取る

これは重機のレンタルでも同じですが、条件が違う見積もりを並べても意味がありません。最低限、次を揃えて渡してください。

  1. 構造と階数(木造/鉄骨/RC、平屋か2階建てか)
  2. 延床面積(登記簿や図面の数字。目分量で言わない)
  3. 付帯物の有無(塀、庭木、物置、カーポート、浄化槽)
  4. 残置物をどちらが処分するか
  5. 前面道路の幅と、重機・トラックが入れるか
  6. 解体後の土地をどうするか(更地に整地するのか、砕石を敷くのか)

これを紙に1枚書いて、同じものを全社に渡す。それだけで、見積書が横並びで比較できるようになります。

契約前に確認する書類

  • 解体工事業の登録番号、または建設業許可番号
  • 建設リサイクル法の届出を誰が出すか(届出者は発注者。代理で出してもらうなら委任の話になる)
  • 石綿の事前調査を誰がやるか、結果をもらえるか
  • 廃棄物のマニフェスト(産業廃棄物管理票)の写しをもらえるか
  • 近隣への挨拶を誰がやるか
  • 工期と、支払いのタイミング

とくにマニフェストの写しは、出てきた廃棄物が正規のルートで処理されたことの記録です。不法投棄されて、あとから施主が問われるという事態を避けるための紙でもあります。「出せます」と即答する会社を選んでください。

相見積もりを取るのが面倒なら

上に書いた条件を揃えて、自分で3社に電話する。これがいちばん確実です。ただ、解体業者は電話帳を引いても出てこないことが多い。近所で工事をしている会社の看板を見て連絡する、というのが現実的なやり方になります。

その手間を省く手段として、一括見積もりのサービスがあります。1回入力すると複数社に見積もりを依頼できるものです。

先に正直に書いておきます。私はこのサービスを自分で使ったことがありません。受付として解体業者と話す機会はありますが、施主として一括見積もりを申し込んだ経験はないので、「使ったら良かった」とは書けません。仕組み上どうなるかと、申し込む前に確認したい点だけを挙げます。

申し込む前に確認したい点

  • 自分の地域が対応エリアかどうか。解体業者はどうしても地域制があるので、公式サイトで先に確認する
  • 複数社から連絡が来る仕組みです。電話が何本か鳴ることを前提に、出られる時間帯を書いておく
  • 見積もりを取ることと、契約することは別です。断る前提で取って構いません
  • 渡す条件は全社で揃える(前述の6項目)。揃っていない見積もりを比べても意味がない
  • 紹介された会社にも、登録番号・許可番号は自分で確認する
  • 補助金の有無・金額は自治体と年度によって変わります。「もらえる前提」で資金計画を立てない

よくある質問

Q. 自分の家を自分で壊すなら、資格も届出も要りませんか?

いいえ。建設リサイクル法の届出は「発注者又は自主施工者」が出すことになっており、自分で壊す場合は自主施工者にあたります。石綿の事前調査結果の報告も、環境省の記載では「元請業者又は自主施工者」が対象です。「自分の家だから」で外れる話ではありません。そのうえで、機械の運転資格は労働安全衛生法の話なので、適用範囲は状況によって変わります。具体的な判断は、自治体の担当課と労働基準監督署に確認してください。

Q. 重機だけ借りて、資格を持っている知り合いに動かしてもらえますか?

「誰が請け負うのか」で話が変わります。解体工事を請け負うなら登録または建設業許可の話になります。また、レンタルの契約は借主が責任を負う形になっているのが普通なので、誰が運転するか・その人が有資格者かは、貸出元に事前に伝えてください。黙って第三者に運転させると、事故が起きたときに保険の話が非常にややこしくなります。

Q. 見積もりが1社だけ極端に安いです。頼んでいいですか?

安い理由を聞いてください。まっとうな理由(自社で処分場を持っている、近くで別現場をやっている、重機の回送が発生しない)もあります。一方で、内訳のどれかが抜けている、あとで追加する前提、という場合もあります。この記事の「内訳を分けてもらう項目」と突き合わせれば、どちらかは判断できます。

Q. 解体費用の相場はいくらですか?

この記事では坪単価の数字を出しません。構造、階数、立地、道路幅、廃棄物の量、その年の処分費で大きく動くうえ、私自身が施主として解体を発注した経験がないからです。数字が要るなら、同じ条件を揃えて複数社から実際の見積もりを取るのが唯一確実な方法です。ネット上の坪単価は、条件が書かれていないものが多く、比較には使えません。

Q. 解体の前に、重機のサイズはどう決めればいいですか?

これは受付として毎日やっている話です。先に決まるのは機械の大きさではなく、現場に入れるかどうかです。前面道路の幅、敷地の入口の幅、電線の高さ、隣家との距離。ここが決まらないと機種は決まりません。電話をかける前に決めておく項目は別記事にまとめています。

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まとめ

「重機を借りて自分で壊せば安い」——この考えが崩れるのは、機械代ではないところに費用と手間が乗っているからです。

  1. 床面積80㎡以上の解体は、着手7日前までに届出。出すのは発注者または自主施工者
  2. 解体用アタッチメントは、整地用とは別の資格区分(3トン以上は技能講習、3トン未満は特別教育)
  3. 石綿の事前調査は有資格者が行う(建築物は2023年10月1日から、工作物は2026年1月1日から)
  4. 廃棄物の処理は自治体に先に確認する。ここが費用の本体
  5. 請け負ってもらうなら、登録番号か許可番号を聞く(500万円未満でも登録は要る)
  6. 見積もりは坪単価ではなく内訳で比べる。条件を1枚の紙に揃えて、全社に同じものを渡す

解体は、始めてしまうと途中でやめられない工事です。瓦礫が積まれた状態で「どうしよう」となっても、誰も巻き戻してくれません。壊す前に、書類の段取りだけは終わらせておいてください。

※本記事は2026年8月時点の各行政機関の公開情報をもとに作成しています。法令や制度の運用、届出先、対象規模は改正や自治体の条例によって変わることがあります。実際の工事にあたっては、施工場所を管轄する自治体の担当課、労働基準監督署、および依頼する業者に必ずご確認ください。本記事は法令解釈を代行するものではありません。

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