建設機械レンタル会社で受付をしています。毎日、借りる人と返す人の両方を見ています。
その中で、週に2〜3度かかってくる電話があります。
「朝借りたチェンソー、午後になったら切れなくなったんですけど」
声の感じでだいたい分かります。怒っているというより、困っている。不良品をつかまされたんじゃないか、と思っている声です。
でも、ほとんどの場合それは故障ではありません。
話を聞くと、多くの方が生えている状態の木の枝を切っています。立ち木の枝打ちです。そして生木を切るチェンソーの刃は、新品でも2〜3時間しかもちません。もっと早いこともあります。
この記事は、そのときにお伝えしている内容をそのまま書いたものです。借りる前に読んでおくと、余計な出費と時間を使わずに済みます。
結論:生木を切る作業なら、刃は半日もちません
先に答えを出します。
- 新品の刃でも、生木を切れば2〜3時間で切れなくなります。これは正常です
- 原因は樹脂と土。とくに土の中の、目に見えない細かい石が刃を欠けさせます
- 切れなくなったときにできることは限られます。だから借りる前に作業内容を伝えてください
順番に説明します。
「切れなくなった」は故障ではありません
チェンソーの刃は消耗品です。タイヤやブレーキパッドと同じで、使えば必ず減ります。
問題は、一般の方が思っている減り方と、実際の減り方が10倍くらい違うことです。
「1日は持つだろう」と思って借りる方が多いのですが、生木相手だと2〜3時間です。丸一日どころか、昼休みまで持たないことも珍しくありません。
そして厄介なのは、機械そのものは元気に動いていることです。エンジンはかかる、チェーンも回る。なのに木に当てても入っていかない。だから「不良品だ」と思われてしまいます。
機械は壊れていません。刃だけが終わっています。
なぜそんなに早く切れなくなるのか
原因は2つあります。樹脂と、土です。
樹脂(ヤニ)
生木には水分と樹脂がたっぷり含まれています。乾いた材木とはまったく別物です。
この樹脂が刃と刃の間に詰まり、滑るようになります。滑ると摩擦熱が上がり、さらに切れ味が落ちる。乾燥した木より生木の方が刃に厳しいのは、この樹脂のせいです。
土(こちらが主犯です)
ただ、うちの受付で見ている限り、本当に刃をダメにしているのは土の方です。
「土がついてる枝なんて切ってない」と思われるかもしれません。でも、立ち木の枝は地面に近いほど土埃をかぶっています。雨が降ればなおさらです。
そして大事なのはここからです。
土の中には、目に見えない細かい石が混じっています。
これが刃に当たると何が起きるか。刃が欠けます。
「鈍る」と「欠ける」は別の壊れ方です
ここを分けて理解しておくと、納得が早いと思います。
| 何が起きるか | 直せるか | |
|---|---|---|
| 樹脂で鈍る | 刃先が丸くなる・目詰まりする | 研げば戻る |
| 土の石で欠ける(刃こぼれ) | 刃が物理的に欠ける | 欠けた深さまで全部の刃を削り揃えないと直らない |
チェンソーの刃は、全部の刃が同じ長さでないとまっすぐ切れません。だから1枚が大きく欠けると、その深さに合わせて残り全部を削ることになります。
一気に寿命が来るというのは、こういう意味です。じわじわ鈍っていくのではなく、見えない石を1回噛んだ瞬間に大きく削られます。
根切りだけは、お断りすることがあります
うちでは、根を切る作業だと分かった場合はお断りしています。
「土を洗い落とせばいいんでしょう」と言われることがあるのですが、それでは意味がありません。理由は2つあります。
- 根に食い込んだ石は落ちない。表面の土は流せても、樹皮の中まで入り込んだ細かい石は残ります
- 樹脂は木の中身。洗っても関係ありません。生木の根は水分と油(樹脂)だらけです
つまり根切りは、刃を最も傷める2つの条件が同時に揃っている作業です。洗ってどうにかなる話ではありません。
同じ理由で、地面すれすれの伐採や、切った木を地面の上で玉切りする作業も刃には厳しいです。切り終わりに刃先が地面に触れた瞬間、一発で欠けます。
切れなくなったサインの見分け方
「そろそろ刃が終わったのか、自分の切り方が悪いのか分からない」という方が多いので、判断材料を挙げておきます。
STIHL(チェンソーメーカー)は公式サイトで、刃を研ぐべきタイミングとして次を挙げています。
- 刃が自然に木材に食い込んでいかない
- 細かいおがくずしか出ない(大きな切りくずが出なくなる)
- 切断中に煙が発生する
- 一方向に動いて、切り口が斜めになる
- ガタガタと音を立てて、振動が大きくなる
いちばん分かりやすいのは切りくずです。
刃が切れている状態では、カンナで削ったような木くずが出ます。細長い削りかすです。それが粉状のおがくずに変わったら、刃は終わっています。
押しつけないと入っていかない、と感じた時点でもう切れていません。
切れなくなったら、どうすればいいか
正直に書きます。このとき、できることはあまり多くありません。
レンタルの刃は「最初に付いている1本」だけのことがあります
店によって扱いは違います。ただ、うちの場合、チェンソーと草刈り機の刃は最初に付いている1つだけで、その代金はレンタル料に含まれています。追加の刃はお出ししていません。
これは裏を返せば、切れなくなっても交換用の刃は出てこないということです。借りる側からすると、ここが一番効いてきます。
実際にやっていること
うちで切れなくなった連絡をいただいた場合、取れる道は2つです。
| 対応 | 内容 | 費用 |
|---|---|---|
| もう1台追加で借りる | 別の機械を追加でお貸しする | 追加のレンタル料がかかります |
| そのまま使い続ける | 切れ味が落ちた状態で作業を続ける | 追加費用なし |
多くの方が想像していないのは、1つ目に費用がかかることです。「刃を交換してもらえる」と思って電話をかけてこられる方がほとんどなので、ここで話が食い違います。
そのまま使う場合に、知っておいてほしいこと
「じゃあそのまま使います」という選択も、もちろんあります。実際そうされる方も多いです。
ただしこれはメーカーが明確に注意している状態です。STIHLは公式に、切れない刃について次のように書いています。
作業が大変になり、安全性も低下します。肉体的な負担も増加し、切断結果が益々悪くなります。
「安全性も低下します」と書いてあるところが重要です。切れない刃は、木に食い込まずに弾かれやすくなります。そこへ力を入れて押しつけるので、姿勢が崩れやすく、跳ね返りも起きやすくなります。
切れないなら、無理に押さない。これだけは守ってください。時間がかかるようになったと感じたら、その日の作業量そのものを見直した方が安全です。
※この記事では替刃(ソーチェン)やヤスリの商品リンクを貼りません。チェンソーの刃はピッチ・ゲージ・コマ数が機種ごとに違い、「チェンソー用」という括りで買えるものではないからです。必要な場合は、必ず機械の取扱説明書か本体に書かれた型式を確認してください。
借りる前に、これだけ伝えてください
ここが、この記事で一番お伝えしたいことです。
予約や受付のときに、「何を切るか」を一言だけ教えてください。
たったこれだけで、受付側は次のことができます。
- その作業に刃が持つかどうかをお伝えできる(2〜3時間で終わると分かっていれば、予定を組み直せます)
- 作業内容によっては、別の機械や別の方法をご提案できる
- お断りすべき作業(根切りなど)を、借りる前にお伝えできる
逆に、何も言わずに借りて現場で困ってしまうと、その時点で選択肢がほとんど残っていません。往復の時間も、追加の費用も、全部あとから乗ってきます。
伝えていただきたいのは、難しいことではありません。
- 生えている木か、倒した木か
- 枝か、幹か、根か
- 土がついているか
- だいたい何本、どれくらいの太さか
この4つだけで十分です。
よくある質問
Q. 切れなくなった刃は、自分で研げますか?
研げます。丸ヤスリと角度を保つガイドがあれば、目立て(刃研ぎ)は個人でもできます。ただし全部の刃を同じ長さに揃える必要があり、慣れないうちは逆に切れなくなることもあります。大きく欠けている場合は、初めての方には正直おすすめしません。
Q. 目立ては、どれくらいの頻度でやるものですか?
一般には2〜3日使うごと、理想は燃料を入れるたびとされています。ただしこれは乾いた木を切る前提の目安です。石や土に当てた場合は、その都度です。
Q. 高い機械を借りれば長持ちしますか?
刃が減る速さは、機械の値段ではなく切る対象で決まります。エンジンが強い機械は作業が速く進みますが、刃の消耗が遅くなるわけではありません。
Q. チェンソーを使うのに資格は要りますか?
仕事として伐木等の作業を行う場合は、「チェーンソーによる伐木等特別教育」が必要です(労働安全衛生規則第36条第8号。学科9時間+実技9時間)。1日だけの作業でも、業務であれば対象です。一方、個人の方がご自宅の庭木を切る場合は、この規定の対象外です。ただし危険な道具であることに変わりはないので、保護具は用意してください。
Q. 刃が減って返したら、弁償になりますか?
店によって扱いが違うので、借りるときに必ず確認してください。うちの場合は最初に付いている刃の代金がレンタル料に含まれているため、通常の使用による消耗で追加請求はしていません。ただしこれは店ごとのルールです。「普通は無料だろう」と思い込まずに、その場で聞くのが確実です。
チェンソーの始動手順そのものは、こちらの動画(2分)にまとめています。
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まとめ
- 生木を切れば、新品のチェンソーの刃でも2〜3時間で切れなくなります。故障ではありません
- 原因は樹脂と土。とくに土に混じった目に見えない細かい石が、刃を欠けさせます
- 鈍るのと欠けるのは別物です。欠けると一気に寿命が来ます
- 根切りは、土を落としても意味がありません。お断りしている店もあります
- 切りくずが粉状になったら、刃は終わっています。押しつけないでください
- レンタルの刃は1本だけのことがあります。切れたら追加で借りるか、そのまま使うかです
- だから、借りる前に「何を切るか」を一言だけ伝えてください
「朝借りて午後に切れなくなった」は、うちでは週に2〜3度ある話です。あなただけではありません。そして、ほとんどは借りる前のひと言で防げます。
※本記事は2026年9月時点の情報をもとに作成しています。レンタル条件・刃の扱いは店舗ごとに異なりますので、実際の内容は借りる店にご確認ください。チェンソーの使用にあたっては、必ず機械の取扱説明書に従ってください。


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