【2026年最新】玉掛けの「1トン」は荷物の重さではありません|資格の線引きとスリングの使用限度

建設現場で、大きな移動式クレーンが小さなコンクリートブロックを1個つり上げているイラスト。フックから2本のワイヤスリングがV字に伸びてブロックの上の角を掛けており、2本の間につり角度を示す弧が描かれている。手前の地面にはシャックルと、両端に輪のあるワイヤロープが置かれている。機械の大きさに対して荷が小さいことが分かる構図。 資格

建設機械のレンタル会社で受付をしています。

つる機械を貸すとき、こちらから玉掛けの資格を確認しています。一方で、スリングやシャックルといった玉掛け用具そのものは貸していません。用具はお客様側で用意していただくことになります。

この2つは、実は両方とも読者にとって重要な情報です。用具は自分で用意するもので、しかも資格は聞かれる。借りる日の朝に慌てないよう、先に知っておいてください。

そのうえで、この記事のいちばんの目的はひとつの誤解を解くことです。

結論:「1トン」は荷物の重さではありません

玉掛けの資格は「1トン」で分かれます。ここまではよく知られています。

問題は、その1トンが何の1トンなのかです。

つり上げる荷物の重さではありません。使うクレーンの「つり上げ荷重」、つまり機械の能力です。

ここを取り違えると、こういう間違いが起きます。

状況要る資格
500kgの荷を、つり上げ荷重2トンのユニックでつる技能講習(特別教育では就けない)
900kgの荷を、つり上げ荷重0.9トンのクレーンでつる特別教育

上の行を見てください。荷物は500kgしかないのに、技能講習が要ります。「軽いものしかつらないから特別教育で足りる」は成り立ちません。

判断するのはその日に使う機械のスペックです。荷物ではありません。

特別教育と技能講習の違い

玉掛け特別教育玉掛け技能講習
対象つり上げ荷重1トン未満つり上げ荷重1トン以上
根拠労働安全衛生規則 第36条第19号労働安全衛生法 第61条/同施行令 第20条第16号
法的な位置づけ特別教育就業制限業務
修了試験なしあり
資格を証する書面の携帯規定なし義務
1トン未満の作業できるできる(上位互換)

押さえてほしいのは下から2行目です。

技能講習が要る玉掛けは「就業制限業務」にあたります。労働安全衛生法 第61条は、事業者に対して資格のない人をその業務に就かせてはならないと定めていて、さらに第3項で作業に従事するときは資格を証する書面を携帯していなければならないとしています。

免許証と同じ扱いだと思ってください。持っているだけでなく、現場に持っていくところまでが義務です。

そして技能講習は上位互換です。1トン以上を取っておけば、1トン未満の作業もできます。迷うくらいなら技能講習を取っておくほうが、現場で困りません。

取り方:技能講習は3日間、費用は2〜4万円

では実際に取るとどうなるのか。思っているより短いというのが率直なところです。

玉掛け技能講習玉掛け特別教育
日数3日間1〜2日
時間15〜19時間(学科+実技)9時間程度
費用の目安2〜4万円2万円弱
試験学科・実技ともありなし

受講先は各地の教習所や労働基準協会などです。日程と費用は実施機関で違うので、直接確認してください。

押さえておくと得なのが時間の免除です。クレーン・デリック運転士免許や移動式クレーン運転士免許を持っていると、講習時間の一部が免除され、1〜2日短くなり、費用も数千円〜1万円ほど下がるのが一般的です。すでに持っている資格があれば、申し込む前に伝えてください。

3日で、2〜4万円。3トン以上のバックホウを動かす車両系建設機械の技能講習と、だいたい同じ規模感です。資格全体の取り方と順番は現場で稼げるおすすめ資格7選建機オペレーターに未経験からなれるのかにまとめています。

受付から:確認される場面と、されない場面があります

ここが、このサイトで何度か書いてきた話につながります。

レンタルの受付をしていると、同じカウンターなのに、資格の確認をする場面としない場面があります。実際にこうです。

借りるもの貸すときの確認法的な位置づけ
車(レンタカー)免許証を必ず確認し、控えを取る運転免許。貸す側にも確認が求められる(道路運送法の許可事業)
つる機械(玉掛け)資格を確認する就業制限業務。資格を証する書面の携帯義務あり(安衛法61条)
ハンドガイドローラー確認しない特別教育。就業制限ではなく、携帯義務の規定もない

受付が気分で変えているわけではありません。法律上の重さが違います。

  • 就業制限業務は「資格がなければ就かせてはならない」と定められ、書面の携帯まで義務になっています。だから確認が自然と発生します
  • 特別教育には、その携帯義務がありません。受けさせる義務は使う側の会社にあり、貸す側に確認を求める規定がないので、確認しないまま渡ることになります

借りる側から見ると、この差はまず分かりません。だから繰り返し書いておきます。

「聞かれなかった=資格が要らない」ではありません。聞かれる仕組みがある業務と、無い業務があるだけです。

ローラー側の話はランマーとプレート、どっちを借りる?|転圧機の選び分けと、資格が要る機械・要らない機械に、車側の話はレンタル車両の保険はどこまで付いているのかにまとめています。

スリングは、自分で用意するものです

実務の話をもうひとつ。

私が受付をしているレンタル会社では、スリングやシャックルなどの玉掛け用具の貸し出しはしていません。機械は貸しても、つるための道具は貸さない、という形です。

これはうちに限った話ではなく、用具は使う側が持つものという整理をしている会社は珍しくないと思います。理由を考えると、いくつか思い当たります。

  • 用具は消耗品です。使えば傷みますし、傷んだかどうかは使った人にしか分かりません
  • 点検の責任がはっきりしません。後で書きますが、玉掛け用具には作業開始前の点検義務があります。貸し借りすると、誰が点検したのかが曖昧になります
  • 荷に合うものを選ぶ必要があります。重さ、形、角、材質。現場を見ていない側が選べるものではありません

つまり実務上、「機械は借りられるが、スリングは借りられない」と考えておいたほうが安全です。当日の朝に手ぶらで来て、つれない、という事態がいちばん困ります。

借りる前に伝えるべきことは初めての重機レンタル|電話でこれだけ伝えればOKにまとめています。つる作業がある日は、用具の有無も確認してください。

玉掛け用具は「安全係数」で決まっています

自分で用意するなら、選ぶ基準を知っておく必要があります。ここは感覚ではなく数字で決まっています。

安全係数とは、その用具が切れる荷重(切断荷重)を、使っていい荷重で割った値です。クレーン等安全規則が、用具ごとに下限を定めています。

玉掛用具安全係数根拠
ワイヤロープ6以上クレーン等安全規則 第213条
フック、シャックル5以上同 第214条
つりチェーン5以上(一定の要件を満たすものは4以上)同 第213条の2

言い換えると、ワイヤロープは「切れる荷重の6分の1まで」しか使えません。1トンつるなら、切断荷重6トン以上のロープが要る計算です。

ここで気をつけたいのが、市販品に書かれている「使用荷重」がその計算済みの数字かどうかです。表示の意味を確認しないまま「6mmで1トンいけるらしい」と又聞きで使うのが、いちばん危ない買い方です。

つり角度で、かかる力は増えます

もうひとつ。2本で吊るとき、角度が開くほど1本にかかる力は大きくなります。

真下に垂らせば荷重は半分ずつですが、角度がつくとロープは斜めに引っ張られます。60度で約1.16倍、90度で約1.41倍、120度で2倍。同じ荷物でも、掛け方で必要な強度が変わります。

「本数を増やせば安全」ではありません。角度を開いて4点で掛けるより、角度を締めて2点で掛けるほうが余裕がある場合すらあります。ここは技能講習で必ず習うところです。

使ってはいけないスリングの見分け方

クレーン等安全規則 第215条は、一定の状態のものを玉掛用具として使ってはならないと定めています。買うときより、使い続けるときに効いてくる基準です。

状態判断
素線の断線が、1よりの間で10%以上使用禁止
直径の減少が公称径の7%を超える使用禁止
キンク(ねじれてよじれた状態)がある使用禁止
著しい形崩れ、または腐食がある使用禁止

現場で見るときのポイントを、実用的な形に直します。

  • 「1より」は、ロープがひとねじれする長さです。だいたいロープ直径の6〜7倍。その範囲で切れた素線を数えます
  • 手袋で握って、素線の飛び出しを探す。目で追うより手のほうが早く見つかります(革手袋で。素手は危険です)
  • キンクは元に戻せません。伸ばしたように見えても内部は傷んでいます。見つけたら使わない
  • 両端のアイ(輪)とフックの根元を重点的に見る。力が集中するのはここです

なお、両端の処理にも決まりがあります。エンドレスでないワイヤロープやつりチェーンは、両端にフック、シャックル、リング、またはアイを備えていなければ玉掛用具として使えません(第219条)。ただ縛っただけのロープは用具になりません。

作業開始前の点検は義務です

クレーン等安全規則 第220条は、その日の作業を開始する前に、玉掛用具の異常の有無を点検することを事業者に義務づけています。

機械の始業前点検と同じ考え方です。点検の義務は使う側にあります。用具を自分で持つということは、この責任も自分で持つということです。

機械側の始業前点検については冬の始業前点検|法令が求めるのはブレーキとクラッチだけに書きました。点検を省いた状態での事故は、補償の対象外とされることがあります。そこはレンタル車両の保険はどこまで付いているのかで触れています。

よくある質問(FAQ)

Q. 500kgしかつらないので、特別教育で足りますか?

A. 足りないことがあります。判断するのは荷物の重さではなく、使うクレーンのつり上げ荷重だからです。つり上げ荷重2トンのユニックを使うなら、500kgの荷でも技能講習が必要になります。機械のスペックを先に確認してください。

Q. 技能講習と特別教育、どちらを取るべきですか?

A. 現場で使う機械が決まっていないなら、技能講習のほうが確実です。1トン以上を取っておけば1トン未満の作業もできる上位互換の関係になっています。ただし技能講習は修了試験があります(特別教育に試験はありません)。

Q. 資格証は現場に持っていく必要がありますか?

A. 技能講習が必要な業務では、持っていく義務があります。労働安全衛生法 第61条第3項が、就業制限業務に従事するときは資格を証する書面の携帯を求めています。事務所の金庫に入れっぱなしでは要件を満たしません。

Q. レンタルでスリングも一緒に借りられますか?

A. 会社によります。私が受付をしているレンタル会社では、玉掛け用具の貸し出しはしていません。用具は使う側で用意していただく形です。つる作業がある日は、機械の予約と一緒に用具の有無も確認してください。

Q. ワイヤロープはどのくらいで交換ですか?

A. 年数ではなく状態で判断します。1よりの間で素線の断線が10%以上、直径の減少が公称径の7%超、キンク、著しい形崩れや腐食。いずれかに当てはまれば使用禁止です(クレーン等安全規則 第215条)。

Q. 4本で吊れば2本より安全ですか?

A. 本数だけでは決まりません。つり角度が開くほど1本にかかる力は増えます。60度で約1.16倍、90度で約1.41倍、120度で2倍。角度を締めることのほうが効きます。

Q. 玉掛けの資格は、貸すときに確認されますか?

A. 私のところでは確認しています。ただし会社によって運用は違います。逆に、ローラーのように特別教育どまりの機械では確認されないことがあります聞かれなかったことは、資格が要らないことの証明にはなりません。

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まとめ

玉掛けで覚えることは、大きく3つです。

  • 「1トン」は荷物ではなく、クレーンのつり上げ荷重。軽い荷でも、機械が大きければ技能講習が要る
  • 技能講習が要る玉掛けは就業制限業務。資格証を現場に携帯するところまでが義務(安衛法61条3項)
  • 用具は数字で決まっている。ワイヤロープの安全係数は6以上。素線断線10%以上、直径減少7%超、キンクがあれば使用禁止

そして受付として、最後に2つ。

スリングは借りられないと思って段取りしてください。機械は貸しても用具は貸さない会社があります。つる日の朝に気づくと、その日が止まります。

そして「聞かれなかったから要らない」ではありません。玉掛けのように確認される業務もあれば、ローラーのように確認されない業務もあります。違うのは法律上の重さであって、必要かどうかではありません。

※本記事は2026年8月時点の情報をもとに作成しています。玉掛け用具の貸し出し可否や資格確認の運用はレンタル会社によって異なります。講習の日程・費用は実施機関によって異なります。実際の作業にあたっては、厚生労働省および所轄の労働基準監督署の案内、用具メーカーの取扱説明書、ならびにご自身が契約したレンタル会社の説明を必ずご確認ください。

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