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建設機械のレンタル会社で受付をしています。
「借りた機械がかからない」という電話は、うちで一番多い問い合わせです。そして電話口で症状を聞いていくと、そのかなりの割合が機械の故障ではありません。かぶっているだけです。
返ってくる機械も同じです。返却された機械がかからず、こちらで開けてみるとプラグが燃料で濡れている。これも珍しくありません。
先に結論を書きます。かぶりを直すのに、買うものはありません。工具を1本使って、10分あれば戻ります。この記事はその手順と、二度と同じことにならないための話です。
結論:プラグを外して、チョークを開けて20回引く
覚えることは3つです。
- プラグを外して、濡れた先端を拭く
- チョークを「開」にして、20回ほどリコイルを引く(シリンダーの中に溜まった生ガスを迴い出す)
- プラグを戻して、かけ直す
この3つで、たいていは戻ります。部品交換も、修理に出すことも、ほとんどの場合は要りません。
かぶりとは、何が起きている状態か
かぶりとは、プラグが燃料で濡れて、火花が飛ばなくなった状態のことです。
チョークを閉じたままリコイルを引き続けると、シリンダーの中に燃料ばかりが送り込まれます。ガソリンは電気を通してしまうので、プラグの電極が濡れると火花がそちらへ逃げて、混合気に着火できなくなります。
つまり「かからないから、もっと引く」が、かぶりを作ります。かからないときに引き続けるほど、状況は悪くなっていきます。
電話で「何回引きましたか」と聞くのはこのためです。20回も30回も引いたと言われたら、故障を疑う前にかぶりを疑います。
直す手順
屋外で、火の気のない場所でやってください。作業中に生ガスが出ます。
① プラグレンチでプラグを外す
プラグキャップを抜いてから、プラグレンチで反時計回りに緩めます。多くの機種は本体に専用工具が付属していますが、レンタル機や中古機では付属工具が欠けていることがあります。先に工具の有無を確認してください。
② 清潔な布で先端の油分を拭く
電極まわりの燃料を拭き取ります。
ティッシュや、毛羽立った布は使わないでください。繊維が電極に残ると、それが原因でまた火花が飛ばなくなります。使うなら繊維の出ない布です。
③ チョークを「開」にして、20回ほどリコイルを引く
プラグを外したまま引きます。これでシリンダーの中に溜まった燃料が、プラグ穴から押し出されます。ここを省くと、プラグを拭いても戻した瞬間にまた濡れます。
プラグ穴から生ガスが噴き出します。顔を近づけないでください。火気も厳禁です。
④ プラグを戻す(手で締めてから、工具で仕上げる)
ここが一番壊しやすいところです。
必ず手で回るところまで手で締めて、最後の締め付けだけ工具を使ってください。エンジン側のねじ山はプラグより柔らかい素材でできているので、いきなり工具で回すとねじ山のほうが潰れます。そうなるとプラグ交換では済みません。
⑤ かけ直す
プラグキャップをはめて、スイッチを運転側にします。
- まずチョークを「開」にして10回引く
- かからなければチョークを「閉」にして5回引く
かぶりがひどいと一度では戻らないことがあります。その場合は①からもう一度繰り返してください。
かけ直すときの手順は、こちらの動画(2分)にまとめています。
やってはいけないこと
| やりがちなこと | なぜだめか |
|---|---|
| かからないまま引き続ける | 燃料が送られ続けるだけで、かぶりが深くなる |
| プラグを火であぶって乾かす | 燃料が付いた部品に直接火を当てることになる。急加熱で碍子が割れることもある |
| プラグ穴の近くで火花を確認する | プラグ穴からは生ガスが出ている。そこで火花を飛ばす行為になる |
| 工具でいきなり締める | エンジン側のねじ山が潰れる。プラグ交換では直らなくなる |
火花の確認をどうしてもしたいときは、プラグ穴から離した場所で、生ガスが抜けきってからにしてください。
それでも直らないときは、かぶりではありません
上の手順を2回やっても戻らないなら、原因は別にあります。見る順番はこうです。
- スイッチ……停止側になっていないか。電話の問い合わせで一番多い
- 燃料が古くないか……これが本命であることが多い(次の節)
- エアクリーナの詰まり……詰まると常にチョークを引いているのと同じ状態になり、かぶりを繰り返す
チョークそのものの使い方と、かからないときの見る順番は2サイクルのチョークの使い方|エンジンを一発でかけるに詳しく書いています。
再発防止:本当の原因は、古い混合燃料であることが多い
かぶりを繰り返す機械には、だいたい古い混合燃料が入っています。
燃料管理も担当しているので、置きっぱなしになった混合燃料は実物で見ています。しばらく経ったものは色が濁り、容器の底のほうが分離しているのが見て取れます。この状態の燃料を入れて「かからない」と言われることが、実際にあります。
メーカーもはっきり書いています。STIHLは、自分で混ぜた2サイクルエンジン用混合燃料の保管期間は30日までを推奨していて、それを過ぎると正常に機能しなくなる可能性があるとしています。長期保管では「ガム」と呼ばれる樹脂状の物体が発生することがあり、エタノールを含む燃料ではオイルとガソリンが分離することもあるとされています。
混合比は50:1、つまりガソリン5リットルに対してオイル100ミリリットル(およそコップ半分)です。
作り方そのものは混合ガソリンの作り方|25:1と50:1を間違えたらどうなるかにまとめてあります。
1か月で使い切れないなら、缶入りの既製品という手があります
月に一度しか使わない機械のために、毎回きっちり30日で使い切るのは現実的ではありません。そこで選択肢になるのが、最初から混合してある缶入りの燃料です。
密閉された缶で売られているぶん、自分でポリ容器に作り置きするより劣化しにくく、その場で計量する手間もありません。
ただし、毎週使う人には割高です。使用頻度が高いなら、その都度きちんと作ったほうが安く済みます。缶入りが向いているのは「たまにしか使わない」「作り置きが余る」人です。
ひとつ注意点があります。缶入りの製品は「25〜50:1用」のように幅を持たせて売られているものがあります。自分の機械の指定比率で使えるかどうかは、商品説明とお使いの機械の取扱説明書を突き合わせてから買ってください。「缶入りだから比率を気にしなくていい」わけではありません。あわせて、缶入りの混合燃料は第一石油類です。保管量と容器には消防法令がかかります。
現場に持っておくと詰まないもの
先に書いたとおり、かぶりを直すこと自体にお金はかかりません。ここで挙げるのは「無いと手順が止まる」ものだけです。
プラグレンチ
手順①が始まりません。本体に付属していることが多いのですが、レンタル機や中古機では欠けていることがあります。
買う前に、自分の機種のプラグのサイズを取扱説明書で確認してください。機種によって違います。サイズが合わない工具はプラグの六角を舐めるだけで、かえって状況が悪くなります。
予備のスパークプラグ(型番は取説で確認してください)
拭いても戻らないほど劣化していた場合、予備があればその場で終わります。
ただしこの記事では商品リンクを貼りません。プラグの型番は機種によって違い、ねじ径・長さ・熱価・抵抗の有無まで合っている必要があるからです。「刈払機用」といった括りで買うと合わないことがあります。
取扱説明書の指定品を確認して、その型番で買ってください。そこだけは省略しないほうがいいです。
よくある質問(FAQ)
Q. かぶらせると、エンジンは壊れますか?
一時的なかぶりで壊れることは、まずありません。プラグが濡れているだけなので、乾かして生ガスを抜けば戻ります。壊れる可能性があるのは、無理に工具で締めてねじ山を潰した場合のほうです。
Q. しばらく放置すれば乾いて直りますか?
戻ることもありますが、シリンダーの中に溜まった燃料はそのままです。プラグを外して生ガスを抜いたほうが、確実で早く終わります。
Q. プラグを外す工具がありません。どうすればいいですか?
レンタルで借りた機械なら、無理に触らず借りた店に連絡してください。工具のサイズも、その機種の正解も店側が把握しています。自分の機械なら、取扱説明書でサイズを確認してから工具を用意してください。
Q. 何回引いてもかからないとき、あと何回引けばいいですか?
引く回数を増やしても解決しません。かからないまま引き続けることが、かぶりを深くしています。10回引いてかからなければ、いったん止めてこの記事の手順に切り替えてください。
Q. 借りた機械がかぶりました。自分でどこまで触っていいですか?
店によって方針が違います。プラグを外す程度なら構わないという店が多いと思いますが、先に一本電話を入れてください。受付側からすると、勝手に分解されて戻ってくるのが一番困ります。連絡さえもらえれば、その機種の癚も伝えられます。
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まとめ
- かぶりは故障ではありません。プラグを外して拭き、チョークを開けて20回引けば戻ります
- 直すのに買うものはありません。必要なのはサイズの合ったプラグレンチ1本だけです
- プラグを戻すときは手で締めてから工具で仕上げる。ここを飛ばすとねじ山が潰れて、本当の修理になります
- 繰り返すなら燃料を疑ってください。自分で混ぜた混合燃料は30日までが目安です
- かからないまま引き続けるのが、一番やってはいけないことです
※本記事は2026年9月時点の情報をもとに作成しています。実際の手順・指定部品・混合比は、お使いの機種の取扱説明書とメーカーの公式情報を必ずご確認ください。


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